競泳をしなくなって、プールに関することは記憶の奥底にしまい込んでしまっていた。


競泳を始める前の温かい気持ちまで、全部箱にしまって蓋をした。


そんな記憶が、こんなにも突拍子もないことで開かれた。


そんな時もあったな、なんて思っていると、



「…………先生?」


先生は、口を半開きにしたまま私を見つめて、固まっていた。


あれ、私変なこと……。


突如、私の顔が茹でダコのように紅く染まった、と思う。


な、なんか真面目な雰囲気でとんでもなく恥ずかしい事言ったんじゃないの、私。


小さい頃を思い出してたら、つい……。


ああもう本当に恥ずかしい!!



「…………うっ……うぁっ……吟葉ちゃ、……」


私が羞恥に悶えていると、目の前から嗚咽のような声が漏れたのと同時に、

先生が……泣き出した。



「うえぇ?!なんで?!先生どうしたんですか!!」


私といえば大混乱。


正直泣きたいのはこっちだ。恥ずかしいセリフを真面目な顔して吐いたんだから。


しかも本当に、なんで先生が泣いてるの????


「あ、あの、どうして」


「私ぃ、吟葉ちゃんのファンで……あの時からのファンでぇ……覚えててもらえてることが……嬉しくてっ……しかも、感謝されてるなんて……ふっ…うぅ……」


泣きながら言葉を紡ぐ先生は私の目を捉えて離さない。

必死に伝えようとしてくれているその内容を聞いて、なんだか私まで泣きたくなった。


「先生……ありがとうございます」


言いたいと思っていること、ちゃんと伝わってますよ、という気持ちも込めて、改めてお礼を言った。

先生も、一瞬顔をポカンとさせ、赤くなると眩しい笑顔で、


「貴方のファンでよかった」


と言ってくれた。