貴婦人は、愛おしそうに2レーンで泳ぐ少女を目で追うと、こちらにもう1度向き直って、


「あの子が、私の孫娘。吟ちゃん。沢本 吟葉というの。貴方が、ファン二人目かしら?」


本当に嬉しそうな笑顔を添えて、そういった。


おばあ様、この人があの子の、おばあ様。


何だかよくわからないけど、すごく納得してしまった。


「そう……なんですね。はい!もうファンになっちゃいました!」


「うふふっあの子にお話したいのだけれど、貴方達、もうすぐ行ってしまうのでしょう?あの子はあと1時間は泳ぐはずだから、お話はできないわね……」


貴婦人は眉を下げてそう言った。


あっちゃんに友人を待っていることを聞いたのだろう。


なんて言えばいいのか迷っておろおろとしていると、貴婦人はハッとした表情を浮かべ、脇に下ろしてあったバッグから、数枚の紙を出した。

そしてその紙をフェンスの間から私に突き出した。


「……??」


私はきょとんとするしか無かったのだが、貴婦人は微笑んで私を見つめ、その手をフェンスの外から引っ込めようとはしない。


受け取れ、ってことだろうか?


「……わぁ!」


その紙は写真だった。吟葉さんの。泳いでいる姿、友人らしき人と笑い合う姿。こちらを見て微笑む姿。


全ての写真の中の彼女の髪は濡れていた。


「貴方に。あげる。ファン仲間だから、特別よ?私は1番目、貴方が2番目。あの子の練習が終わったら貴方のこと、伝えておくわね。」


貴婦人は上品に微笑んだ。