瞬間、周りの空気がまるで映画のシーンが変わるように変化した。


彼女自身の纏う空気でさえも、あの気だるげなものから凛としたものになっている。


その姿はあまりにも自然で、それがそうでないといけないような、不思議な感覚を覚えた。


あの子は水に好かれているんだ、とすら思うような自然さ。


なんて美しい泳ぎなんだろう。


それから15分位だったと思う、ずっと飽きずにその子の泳ぎを見ていた。


釘付けにならざるおえなかった。


あっちゃんは突然黙った私を不思議に思ったようだけれど、ゲームを再開してしまえば私なんて見えてないのだ。


わたしも、途中からあっちゃんの姿が見えないほどその子の泳ぎに魅了されていた。


心の中で最初はすごいすごい、と思っていたのだけれど、そんな言葉では言い表せないほどの泳ぎで、なぜか感動して涙が溢れた。


あっちゃんは気づいていなかったようだけど、フェンスの中の日陰のベンチに座っていた、いかにも貴婦人と言った様子のおばあ様がこちらを見て驚いて私に声をかけた。


「(どうしたの?なにか悲しいことでもあった?)」


貴婦人は流暢なフランス語でそういった。


もちろん私はフランス語はわからないし、何を言ってるのかさっぱりだったのだ。


貴婦人の顔を見つめて、何か言わねば、とあたふたしていると、あっちゃんが顔を上げて、状況を把握してるんだかしていないんだか、眉をひそめてこちらを見ると、私がフランス語がわからないという旨の事を伝えてくれたらしい。


あっちゃんはフランス語を専攻していた。


それから暫くあっちゃんと貴婦人が真面目な顔をして話しているのを横で聞いていたが、私は話の内容が気になったのであっちゃんに声をかけた。


あっちゃんは、全部聞き取れるわけじゃないからあってるかわからないけど、と言いながら教えてくれた。


それを聞いて、そこ貴婦人は突然、


「まぁ!あなた達日本人ね!」


と、嬉しそうに言った。


日本語だった。