「……。」
教室を出て、階段で5階までのぼり、しんとした廊下を歩く。
HRの時間だから静かなのかと思ったら5階には特別教室しかないからか。
音楽室は西の突き当たりの教室。
この学校、広すぎて不便だな……。
ガチャッ
「失礼しまーす……」
挨拶しながら音楽室に入ると、散らかった楽譜とよくわからない書類、雑誌、音楽関連の書籍、などなどところ狭しと並んでいる。
つまりは、汚いのだ、ものすごく。
「なにこれ……昨日までは綺麗だったのに。」
っていうか先生いないし。
どこにいるんだろう?
ガタガタガタッ
「キャー、まってまって、いかないで、そっちはダメなの!!」
音楽準備室、という札が下がっているドアの向こうから聞き覚えのある声がする。
先生だ。これはどういう……
荷物の隙間を縫って恐る恐る準備室に近づく。
ドアを開けると、本棚と本棚に頭を突っ込んだ先生が何やら呟いている。
「あー、まってまって、どうしよう。ほら、こっちおいで?」
「あのー、先生?用事って……ていうかこの荷物は……」
「え?!あぁ、吟くん!ごめんね!まって、今ちょっと、あぁっ!!」
先生が驚いたような声を上げた瞬間。
先生が頭を突っ込んでいる隣の本棚の間から何やら小さな影がこっちに突っ走ってくる。
そして、私の足に当たった。
チュァッ と悲鳴のような声を出して。
「え、ネズミ……?」
その小さな体を持ち上げると、ハムスターだという事がわかった。
「吟くんさすが!ありがとうね~。よかったぁ、ピピちゃん。ハムスターなの。」
「はぁ……。」
……見ればわかります。
「この散らかりっぷりはこのハムスターが脱走でもしたからですか?」
「え……?」
先生がキョトンとした顔をする。
「えっ?」
こちらも困り顔をするしかない。

