パタパタパタっ
廊下を走る音が響く。
やばい、後2分くらい?入学してすぐに遅刻はまずいよね?!
走ったせいか、ウィッグの髪が汗で顔に張り付く。
あーもう!みづらい!前髪!!!
女だってバレないなら前髪切っちゃいたいな。
ガラガラっ
「セーフっ…」
つい、ボソリとつぶやく。
若干注目されながら自分の席に着く。
はぁ、また悪目立ちしちゃう。いや、全部自分が悪いんだけど。
っていうか、私本当に友達いないなぁ。
挨拶する相手もいないなんて。
「…あ、あの、沢本くん?」
席に座った私の横に可愛らしい、女の子が駆け寄ってきた。
そして沢本くん…ん?あぁ、私か!私に話しかけているのね?!
「は、はい。なんですか。」
声…変に思われてないかな。
一応低い声出してみたつもりなんだけど。
「あ、九重先生が、今日のSHRは特に言う事もないので自習にするって。あと、沢本くんは音楽室に来て欲しいってことだったよ。」
音楽室?
なんの用だろう。ま、私も先生に相談したいことあったしちょうどいいか。
「ありがとう。行ってみるよ。」
彼女を見つめて努めて笑顔にそういうと、
「いっ、いえっ!」
と言って何故だか顔を赤らめて忙しなく立ち去ってしまった。
…なんか怒らせるような事したかな。
仲良くなれるかもー、とか思ったんだけど。
用事を伝えに来てくれただけだし、今私男装してるし。
うん、友達は出来そうにないな。
うん!元々そこには期待してなかったし、早く音楽室行こう!
目尻が少し熱いのは気のせいだということにしよう、うん。

