午後九時半。裏門からこっそりと敷地内から出た。



学校に許可をもらっているが、一応、だそうだ。



それにしても四月始めってこんなに寒かったっけ。



「くしゅっ…あー風邪ひいたかも。」



「あら、大丈夫?私、のど飴持ってるわ。とりあえず、これ舐めときなさい。」



「すみません・・・ありがとうございます。」



九重先生は本当に親切だなぁ。



「ていうか、空調切ったまま泳ぐからでしょ。」




「うぅ・・・すいません、夢中で。」



「もう、私が来た時は何か考え事してたみたいだし。……寒いプールサイドで。」



「…すみません。」



「私、見惚れちゃったのよ?プールサイドでただ立って少し上を向いて目をつむってるあなたに。なんか月明かりがスポットライトみたいでねぇ・・・」



「ちょ、そんな細かく説明しなくていいですよ!!恥ずかしい…。」



絶対わざと言ってるなぁ、この人。



まぁ九重先生の軽口は嫌いではないけど。



むしろ好きな方だけど。



「あ、ここ、私の家です。すみません、わざわざ。」



普通に歩いてきちゃってたけど、先生遠回りとかになってないかな・・・。



・・・今更過ぎるけど。



「いいのよ。私は電車通勤だから通り道だしね。」



「先生もレディですから、気をつけて帰ってくださいね。」



「生徒に心配されちゃったー。しかもかっこいい男の子に変装した女の子に。」



「もうっ!からかうのはやめてください。失礼しますね!」



「はーい、またね」



…なんだか九重先生は面白いな。


会ってたった2日で仲良くなってしまった。