吟葉side



「はぁーっ。気持ちよかった!」



プールから出て思わずそうつぶやく。



ひっさしぶりにこんなに自由に泳いだな。



電気消したまま泳いだからなんかプールが幻想的でつい調子に乗ってしまった。



本当に楽しかった。



楽しい。


楽しい。




自由で、ただ自由で。自由だからこそ楽しい。



競争相手もいない。



タイムも測らない。



それどころか型も何もない。



ただ自由に水遊びをしているように泳いだ。



なんて楽しい。


涙が出そうだ。


幼稚園の記憶が脳裏に映る。


まだフランスにいたころだ。


幼稚園の屋上プールでの水遊び。


ただキラキラと輝いている、そんな思い出。


水面は浅くて、とても泳げない。


でも、たくさんの友達と水で遊んで。



キラキラキラキラ…。




「あら、もう終わっちゃったかしら?」



「えっ?」



一気に現実に引き戻らされた。


九重先生だ。


「まぁもう9時だしね。それにしても空調まで切ったままなんて。風邪引くわ。」



___でも、綺麗ね。



先生はそう付け足した。



ていうか、もう9時か・・・。



夢中になって、子供みたい。


思わずクスリと笑ってしまう。



「あら?何かおかしいこと言った?」



「いえ、楽しかったなって。思って。こんなのひさしぶりで。ありがとうございます。」



「いいのよ。でも残念だわー。あなたの泳ぎ、見たかったのに。明日もここに?」



先生は本当に残念そうにそういった。



今日は何か用事があったのだろうか。



多分今日途中から見られても私は気づきもしなかったろうに。



「いえ、流石に毎日は…。」



「あら、遠慮しなくていいのに。それとも、私には見られたくないのかしら?」



「いえいえ、違います。なんか楽しすぎて狂っちゃいそうなので…。」



「あははっ!面白い事を言うのね。いいじゃない。狂っちゃえば?」



先生は盛大に私を笑って、微笑んだ。



「楽しくて狂っちゃうなんてそんな嬉しいことはないわよ。若い子の特権だしね。」




「…ふふっ。先生もまだお若いですよ。」



「あら、うまいのね。」