入学式が終わり、入学式前の落胆状態(俺のせい)から復活したカズが俺によって来た。

「校長のあれは、ヅラだな。」


これ以上ないくらい下らないことを言いに。


アホか。

「いま、アホか。とか思っただろ。顔に出てるぞ。あ、そういえば隣のクラスにすげー地味なヤツがいるらしいぜ?」

屈託なく笑いながらそんなことを言う。


「地味…?」


「そう、もう、超地味!!逆に目立つ地味さ。」


「へぇ…で、それがどうした?」


「あぁ、首席なんだってさ。」


「成績?」


てかなんでお前そんなの知ってるんだよ。


「そーそー。でも入学式の代表挨拶、二位がやったじゃん?それで気になってさ。ちょっと聞いたんだよ。」


……なんで俺が聞きたいことわかったんだろ。


気持ち悪っ。


「まぁ、男じゃなきゃ話しかけてたかも。てかそんな嫌そうな顔しないでくれる?」


「女好きが。嫌な顔じゃないし、引いてただけだし。」


「なぜ引いた?!まぁ、それより……友好関係は広く持っておいた方がいいぞ?はーるちゃん?」


…。面白がりやがって。


なにがはるちゃんだ。


確かに俺の顔は線が細くて、子供の頃なんてしょっちゅう女の子に間違われた。


今はマシになったけど、カズほど男らしい顔をしているわけではない。


「うるさい黙れ、はるちゃん言うな。腹の肉削ぐぞ。」


「そんなに怒んなよー。それに肉ではない、筋肉だ。」


んなことどうでもいい。終始笑顔のヤツにいわれるとことのほかイラつくな。


「あ、ギター部あるじゃん!俺、入ろうかなー。」


不意にカズが言った。


教室の掲示板に張ってある勧誘ポスターを見たのだろう。


【ギター部、部員募集中!!
チアリーダーしませんか?!
ソフトテニス部県大行きました!
楽しくバレーしませんか?
漫画好き大歓迎!!アニメーションをつくりましょう!
競泳部、マネージャー募集中!!選手も初心者大歓迎!
想い出を作りませんか?写真部
あなたの思いを作品へ!美術部!】


…。



「いいんじゃない?」



「ハルはなんかやんねーの?きょ…」


「帰宅部だよ。」



被せるように言ってしまった。


カズの顔が一瞬曇る。


「そうか。」


悲しそうに笑った。


卑怯なヤツだ。俺も、お前も。