春にしては暖かい4月7日。


俺は今日、高校生になる。


そんな春のうららに酔っていたのだが、その直後には非常に困ったことになっていた。


「お前、何て髪の色をしてるんだ!!新入生か?!全く最近のヤツは!!」


厳つい顔のおじさんがこちらを見て怒りの形相を露わにしている。


近くに寄ってきたと思ったら強い力で腕を掴まれた。


中学式だというのに青いジャージ姿のそのおじさんはなにやらブツブツと大声で文句を言いながら俺の腕を掴んだまま校門をくぐる。


正門前で周りの新入生らしき生徒達が何事か、と見ているのがわかった。

その中に見知った顔も…………

おい、カズ、何笑ってんだよ。

カズを睨みつけたが、カズは腕を広げてやれやれ、といったポーズをとるだけだった。


……


昇降口近くのやたらと小さな教室についた。


「名前はなんだ?何組だ?その髪のいろはなんだ?説明会は来なかったのか?」


なんてマシンガンquestionだ。


俺まだ何もいってないんだけど。


確かに髪の色は金色に近い茶髪だけど。


「で、名前は?」


あ、質問が減った。


「雨辻 晴斗_アマツジ ハルト_です。」


「何組だ?」


「いや、まだクラス分けの表見てないんで、わからないです。」


校門から連れてきたくせにわかるわけないだろ。


……とはまぁ、言えなかった。


「あぁ、そうか…。で、お前、その髪色はなんだ?」


「これ、地毛なんですよ。俺、肌も白いし、色素が薄いみたいで。しかも、塩素で色がさらに抜けちゃっ……あ、いや。あの、黒染めがダメだって説明会の時言ってたので、そのまま来ちゃったんですけど、まずかったですかね?」


俺は、この勘違いしている先生に懇切丁寧に言い訳をする。


入学式から災難すぎないか?


「地毛?そうか、すまない。早とちりだ。地毛なら問題ない。すまなかったな。あ、担任にもその髪のことは言えよ。」


笑顔でそういったおじさんはドアを指して手を振った。


早く出ていけ、という意味だろう。


軽く舌打ちしてやろうかと思ったが、大人しく礼をする。


「はい。わかりました。」


口が滑ったとこもあったし、あのおじさん顔怖い…。



教室を出て、扉の表札を見る。


【生徒指導室】


…入学する前から生徒指導室に連行ってどういうことだよ。


あ、時間が…。あのおっさん、ギリギリまで身に覚えのない説教しやがって。



……クラス、どこだろう。