「いただきまーす」


変装をやめ、普段着を着た私と柚ちゃんは二人で食卓を囲んでいた。



お母さんは、友達とご飯。



いい年しても若いなぁ。



そんなわけで今日は柚ちゃんが晩ご飯を作ってくれた。



私は料理からっきしだから。



フランスでもおばあちゃんに作ってもらってたし。



あ、そうだ。水泳…。



「柚ちゃん。柚ちゃん。水泳、できるってさ。」



「あー。そう。」



興味なさそうにテレビを見ている柚ちゃん。



と思ったら、「えっ?!今なんて言った?!」



驚きの表情に顔が崩れた。



「だから、私、水泳する」



「え?!部活?でもお姉ちゃん、水着着たら女だってバレちゃうじゃん!」


「いや、部活って言うか…。マネージャー?」




「水泳するって言わなかった?マネージャーは水泳、しないよ。」


柚ちゃんがしたから見上げるようにじっとりとにらんでくる。


……怖いよ?


「いや、マネージャーになったら部活後、8時から使っていいってさ言ってくれたの。」



「え?先生が?」



「理事長先生とか顧問の先生とか。」



理事長先生も、九重先生もいい人だったなぁ…。



「ふーん。水泳、止めないんだ。」


冷たくそういい放つ柚ちゃんの顔はよく見えない。



「うん。やめられない。でも、競泳はやめた。」



「そっか…。お姉ちゃんは、強いね。」


強くないよ。わかってるんだ。



ただ、自分が好きなものを、唯一の得意だったことを手放したくない。



しがみついていたい。



それだけなんだ。



しがみついてないと、自分じゃなくなりそうで、怖くて。



でも、傷つきたくなくて。



やっぱり、弱い。