入学式が終わった。



校長先生の話は割りと短くて、予定より大幅に時間が削れたらしい。



今日は入学式だけだから、もう帰れる。



ハズなんだけど。



いや、筈だったんだけど。



「今朝はごめんね、私、貴女の担任になった九重 三鈴-ココノエ ミスズ-です。」


入学式直後、教室に戻る廊下で「放課後、音楽室に来てもらえないかしら?」と言われ、今に至る。


今朝のことで、先生が私のことを知ってるというのはわかっていた。


ここは防音だし、鍵もあるから安心して話せるけど。



「あ、はい。さわも__」


「沢本・エリー・吟葉さん!!よね?!と、とと取りあえず、サインください!」


私の声を遮って顔を真っ赤にして色紙を差し出してくる。


この人、もしや物凄く変な人なんだろうか。


いや、そんなことより。



「あ、はぁ。えっと、はい。」


取りあえず、九重さんへとかいて、色紙を返す。


「あの、学校ではその、私のことは言わないで欲しいんですが。男装もしてますし、めっちゃださいですし。あ、明日からはもうちょっとマシにしてきますけど。
って、そうじゃなくて……。」


私は何をいっているんだろう。


先生の琥珀色の目に見つめられて、テンパってしまう。


「大丈夫よ、男装のことは言わないし、もう人前であんなことしないわ。朝は、その、ちょっと興奮しちゃって。ごめんなさいね。」


申し訳なさそうに笑う先生を見て、私の方が申し訳なくなってしまう。


でも、嬉しそうだから、よかった。


日本にも私を知っている人はいるのか。