だがしかし、目立ちたくない。平和に、穏やかに過ごしたい。



過ごしたい……のだけれど。



「見てよ、あれ。(笑)」

「なにあれ、めっちゃ地味(笑)」

「ホントだ、何時代?」


お、お母さん。やり過ぎて目立ってるよ!!!


いや、やり過ぎたかなとは思ったけどさ。



…黒縁メガネ、長い前髪、茶髪のボサボサな頭。第一ボタンまでしっかりと閉め、きっちりと閉めたネクタイ。細く、男にしては小さめの身体。


うん。やりすぎた。


初日から目立ってどうするんだよ!!


「あら?貴方、吟葉さん、沢本吟葉さんよね?」


「あ、はい?」



目の前には長身で、とてもきれいな女のひと。


腰まである茶髪の長い髪が印象的に揺れる。



「ごめんなさい、お母様から聞いていないかしら?理事長の鷹野 恵子って言います。聞いていた通りの見た目ね。それにしても派手にやったわね」


「り、理事長先生ですか?!」


そういえば、理事長先生がお母さんの知り合いで…無理をいって男装を許してもらったんだっけ?


ぶ、無礼の無いようにしなければ。


「あ、いいのいいの、そんなに固くならないで。凪ちゃんとは親友だし、昔あったこともあるんだけど、子供だったものね。


男装は多分大変よ?」


な、凪ちゃん。お母さんの事だよね、凪沙って名前だし。


それにしても、男装についてまで心配してくれるとは。


「はい…迷惑もかけると思います。すいません。」


「あ、謝らないで。私から呼んだんだもの。迷惑くらいかけてちょうだい」


「すいません。ありがとうございます。」


何ていい人…!


め、迷惑くらい、かけてちょうだい?


言葉までやさしい!!



「そうだわ、貴方、首席よね?凄いわー!ウチの高校偏差値高いのに。」


「あ、いや、そのことなんですけど…。成績は公開しないで貰いたいんですが」


目立ちたくない。人と、関わりたくないな。


「あら。ごめんなさい。クラスが成績順になっているから…。」


「え?!そうなんですか?」


初耳だ…。


「あぁ、でも目立ちたくないのよね…。入学式の挨拶は二番の子にやらせるわ。」


「あ、ありがとうございます。」


本当に親切なひと…。


立ち去り際に、
まぁ、髪?ウィッグは整えて、切った方がいいわね。胸ももう少しおさえたら?イケメンになるわね。フフフッ。
と言った理事長のことは忘れたいけれど。