あの夜以来、ケイは言葉が少なくなった。それでも物問いげな瞳のまま、律儀に私の部屋へと通ってくる。
ホテルの通路の隅へ避けて、通話をタップした。
窓のほうへ顔を寄せると、街の灯りが視界に広がる。
『美湖さん? ケイです』
ケイの囁くような声は耳に心地がいい。
『今、美湖さんの部屋の前にいるんだけど。そしたらちょうど美湖さん宛ての宅配便を受け取って……俺、このまま待っててもいい?』
「ここからだと、あと三十分くらいかかるんだけど」
『俺……待ってるから』
ありがとうの言葉を飲み込んだ。
荷物を受け取ってくれたことへのお礼なのか、待っていることへのお礼なのか、自分でも区別がつかなかったからだ。
結局「うん」とだけ頷き、スマホをバッグのなかへしまった。
こんなことすらままならない自分のどこが大人なのだろうと、ひとつ息を吐いて顔をあげると、こちらを眺める保科さんと目が合った。
その目は先ほどの取材が始まる前と同じで、何の感情も映していないように見える。
「お疲れ様でした」と横を通り過ぎようとしたとき、いきなりバッグの持ち手を掴んでいる右の手首を、ぎゅっと保科さんに掴まれた。
びっくりして手を振り払おうとすると、彼はさらに半歩分の距離をつめてくる。
「……なんなんですか、コレ」
「……あんた『三谷ミコ』だよな? こんなところで何やってんだ」
昔とはまるで容姿の違う、いわば別人の私をジロジロと眺める。
ホテルの通路の隅へ避けて、通話をタップした。
窓のほうへ顔を寄せると、街の灯りが視界に広がる。
『美湖さん? ケイです』
ケイの囁くような声は耳に心地がいい。
『今、美湖さんの部屋の前にいるんだけど。そしたらちょうど美湖さん宛ての宅配便を受け取って……俺、このまま待っててもいい?』
「ここからだと、あと三十分くらいかかるんだけど」
『俺……待ってるから』
ありがとうの言葉を飲み込んだ。
荷物を受け取ってくれたことへのお礼なのか、待っていることへのお礼なのか、自分でも区別がつかなかったからだ。
結局「うん」とだけ頷き、スマホをバッグのなかへしまった。
こんなことすらままならない自分のどこが大人なのだろうと、ひとつ息を吐いて顔をあげると、こちらを眺める保科さんと目が合った。
その目は先ほどの取材が始まる前と同じで、何の感情も映していないように見える。
「お疲れ様でした」と横を通り過ぎようとしたとき、いきなりバッグの持ち手を掴んでいる右の手首を、ぎゅっと保科さんに掴まれた。
びっくりして手を振り払おうとすると、彼はさらに半歩分の距離をつめてくる。
「……なんなんですか、コレ」
「……あんた『三谷ミコ』だよな? こんなところで何やってんだ」
昔とはまるで容姿の違う、いわば別人の私をジロジロと眺める。

