眠れぬ夜をあなたと

自分勝手に傷付けて、勝手に傷付いた。

後悔の映像は擦り切れるほど何度も心の中で再生されたけれど、結局、最後に残ったのは終わってしまっても消えないものは、無理に消さなくていいんじゃない? と開き直った心だけ。消してしまおうと思うこと自体、あきらめた。

「苦いのも甘いのも、全部自分が望んだものだから。でも実は……そんな風にひとを強く思ったってことが忘れられないのかも…ですねぇ」

伏せた目をハナエさんへと向けると、彼女は微笑んで頷いた。それを共感と受け取って、私も意識的に笑みを浮かべたとき、カシャカシャカシャカシャと無粋な音が耳に響いた。

その瞬間をとらえようとするようなカメラの連写音に、沸き上がる小さな苛立ちを押し殺し、チラリと音のほうを見やる。すると、ファインダー越しだというのに、保科さんの強い瞳と目が合った気がした。


本日はありがとうごさいました、と津村君が皆にむかって頭を下げたのを合図に、座談会は終了した。

帰り際、ほかの部屋で待機していたスタッフから手渡された茶封筒には、謝礼金が入っていた。

ただの参加者として、その封筒を受け取ってバッグのなかへ突っ込んだとき、バッグに入れっぱなしだったスマホが、ブルブルと揺れていることに気づく。

画面を確認して、着信をとるべきかを迷った。

……ケイから、だ。

ケイは志垣さんに紹介された事務所のバイトの面接を受け、来月から採用されることになったらしい。叔父の店を辞める日も、カウントダウンに入っている。