眠れぬ夜をあなたと

「あの~、ミチルさん。そこのおいしそうなエビさんとってもらえますか~」

害のなさそうな笑みを浮かべるように心がけて、私はエビのフリッタ―を指さした。

「これ、おいしそうですよね」

ミチルさんは微笑んで、小皿を手にした。営業職と書いてあっただけに、人当たりが良さそうなひとだ。

少しずつ皆の笑顔を引き出して話しやすい環境を作るのが今日のバイトだと思えば、いつもの自分よりテンションが上がっていく。

台本があるから溶け込むのは簡単だ。私はその通りに従えばいいだけだから。



彼女たちは時間が経つうちに硬さが抜け、友人と語らうように恋の話をし始めた。津村君もさりげなく、自分の台本に沿った質問を織り交ぜる。

ときには楽しそうにときには悲しそうに自分の心の内に秘めた恋愛観を語る彼女たちは、まぶしくて美しかった。それがたとえ理想論だとしても、前向きで夢とか希望とか、そんなポジティブな言葉が似合う。

まぶしく思えるのは、私が典型的な小ずるい女だからだ。

見たくないものからは目をそらし、甘さだけを受け取ろうとする。

ふところになにかを入れるのは、大切な場所を明け渡すようでイヤだから、誰も深く入り込んでほしくない……。

「……ミヤコさん?」

隣のハナエさんの指が、遠慮がちにひじの辺りをつつく。

いけない、いけない。

ようやく最後のトーク時間になったところなのに、冷えたシャンパンが美味しすぎた。脳みそに浸透して、ぼけっとしてしまったらしい。