それが証拠にこの何年も、昔ドラマに出てましたよね? なんて声を掛けられたことはない。はなから日常に埋没するような個性しか持っていない、それが私だからだ。
「それは美湖ちゃんが『三谷ミコ』を消しちゃったからでしょうよ」
「はい、そこまで、だ」
叔父は急にパンッと手を叩いて立ち上がり、私と志垣さんの座っていた三人掛けソファの真ん中に腰を下ろす。ちょうど背中で私をかばうような恰好だ。
「龍司、美湖に絡むなよ。そんなに絡むんなら出禁にするからな」
叔父は冷ややかな目で志垣さんを見やる。志垣さんは、対称的でにやにやした笑いをやめたりしない。
「マサ、ひどーい。俺たち、竹馬(ちくば)の友でしょ? そんな友人を出入禁止にするっての? 溺愛してる姪っ子のためだからって?」
「竹馬って……。竹馬なんか乗るほど小さくなかっただろ。お前と会ったのなんて高校生の時だ」
「それは言葉のアヤって奴でしょうよっ‼ マサは本当に融通がきかないなっ」
ああでもない、こうでもないと、子供みたいな言い合いを始めた叔父に感謝しながら、わざとらしく「ああ、もうこんな時間」と立ち上がる。
……これはもう、逃げるが勝ちでしょ。
「雅樹さん、取材の件は受けて下さい。お願いします。じゃ、志垣さんも……サヨナラ」
私はふたりの返事もろくに聞かず、猛ダッシュで息苦しい部屋を脱出した。
「それは美湖ちゃんが『三谷ミコ』を消しちゃったからでしょうよ」
「はい、そこまで、だ」
叔父は急にパンッと手を叩いて立ち上がり、私と志垣さんの座っていた三人掛けソファの真ん中に腰を下ろす。ちょうど背中で私をかばうような恰好だ。
「龍司、美湖に絡むなよ。そんなに絡むんなら出禁にするからな」
叔父は冷ややかな目で志垣さんを見やる。志垣さんは、対称的でにやにやした笑いをやめたりしない。
「マサ、ひどーい。俺たち、竹馬(ちくば)の友でしょ? そんな友人を出入禁止にするっての? 溺愛してる姪っ子のためだからって?」
「竹馬って……。竹馬なんか乗るほど小さくなかっただろ。お前と会ったのなんて高校生の時だ」
「それは言葉のアヤって奴でしょうよっ‼ マサは本当に融通がきかないなっ」
ああでもない、こうでもないと、子供みたいな言い合いを始めた叔父に感謝しながら、わざとらしく「ああ、もうこんな時間」と立ち上がる。
……これはもう、逃げるが勝ちでしょ。
「雅樹さん、取材の件は受けて下さい。お願いします。じゃ、志垣さんも……サヨナラ」
私はふたりの返事もろくに聞かず、猛ダッシュで息苦しい部屋を脱出した。

