眠れぬ夜をあなたと

ひと昔前のようにセーフティセックスを唱える強い女が減ったなんて、姪の私に訴えられても気まずいものがあるけれど、雅樹さんがお店の女の子に病気や妊娠の相談を受けるたびに、溜息を吐いていたのも事実だった。

ネット販売も始めたこの一年ほどは、売り上げも着実に伸びている。新しい商品を見つけて仕入れるのもそれなりに面白いし、地味な発送作業も嫌いではない。

それでも叔父は、いつだって私に最善の道を選ばせようとする。

心配げな叔父を、先ほどの仕返しとばかりに鼻で笑った志垣さんは、繊細なカッティングを施したグラスを掲げ、麦茶みたいな勢いで喉を鳴らして飲み干した。似たような色でも、40度を超えたアルコールなのに。

「いやだね、シスコンのなれの果ては。ベタ甘で、いつまで経っても子離れできない親父並だねぇ。どんだけふたりで寄り添って生きていくつもりなんだか」

志垣さんはさり気なく言ってるつもりなんだろうけれど、こんな瞬間、私はこの人に嫌われているんじゃないかと感じるのだ。

普段、軽く私をからかうのとは別の、苦々しい思いを覗かせる。

だからこの人は、苦手なんだ。

「美湖が何足のわらじを履こうが構わないが、無理だけはしないでくれよ」

志垣さんの胸の内に気づかない叔父は、いつものように私を心配する。