「やだなぁ、ガッキー呼ぶな」

「おっさんとどっちがいいです? 飲み屋のお姉ちゃんに呼ばれたんなら、喜んでお返事するクセに」

「おっさんって……。ひどくない? ねえ、マサ~。美湖ちゃんがおっさん言った~」

「そんな小学生の真似したって、可愛くないんだよ龍司。お前は、美湖に変なちょっかい出さないでくれ」

叔父はフンッと鼻を鳴らすと、私へ視線を動かした。

「こいつが絡んだために俺のところを取材する話しになったのなら、無理することはないんだよ」

叔父は、気乗りしないなら断っておくよ、と優しく微笑みを浮かべる。

そんな慈悲深い笑みを浮かべられると、自分の些細なこだわりが大人気ないものに感じてしまう。むしろ、担当の成本さんがそうおっしるのならばやってやりましょう、と変な意地も出るってものだ。

「別に平気。仕事だから」

何てことないと肩を竦めた私を、叔父は思案気な顔で見つめた。 

「最近、そっちの仕事が増えているのなら、店の方は無理しなくてもいいよ。バイト君達もカバーしてくれるだろうから」

「カバーはいつもしてもらってるけど。でも、そんなに言うほど稼げてないよ、雅樹さん。ガッキーは口ばっかで仕事くれないし」

「だから大人しく俺んところにいればよかったのにさ。変な意地張ってあんな弱小出版社に行くから、ものの二年で潰れちゃったんだよ」