「ふあぁー眠い」

早朝

壮美はある一軒の建物からよろよろと出てきた。

昨夜は一期屋から出た後、寄ってたかってきたおなごの1人をとらえ、一夜をすごした。

そのおなごはまだスヤスヤと寝ているようだが、壮美はそんな事気にはしない。

「さてと、帰りますか」

壮美は懐にしまってあったキセルを取り出し、口に加えながら朝の町を歩いて行った。









壮美は町から離れると、深い森の奥へと進んだ。

日が出たといっても、やはりまだ森は薄暗い。

進むにつれ霧も出始め、肌寒くなってきた。

「・・・・」

ふと、壮美は足をとめ、ゆっくりと来た道を振り返った。

そしてまじまじと一本の木を見つめると、ため息をついた。

「おい、いるんだろ。出てこい」

壮美がそう言った瞬間、その木の上から、物音一つたてずに何かが降りてきた。

見るとそこには、黒装束を身につけた1人の男が、膝を折ってしゃがんでいた。

「お迎えにあがりました。壮美さま」

そして、黒装束の男は深く頭を下げた。

「迎えに来たなら、わざわざ気配を消さなくてもいいだろう」

「常に気を張るのが我々の仕事の一部ですので」

何の感情もこもっていない声に、壮美はまたもやため息をついた。