桜の散る頃に





「席に座って。授業始めるぞ。」



入学式から1ヵ月経ち、授業も普通に始まり、慌ただしさも徐々に落ち着いていた。

初日からヤル気さえ見せなかった上林真波も毎日登校していた。

とりあえず安心していた。



「じゃ。今日はここまで。次の授業までにさっき言った課題終わらせておくこと。いいね!」
「はぁーい」


生徒達のヤル気ない返事を適当に聞き流し、朝倉は職員室に戻った。


「あの子どんな感じ?」

お茶を飲もうとマグカップに口を付けた瞬間、頭を軽く小突かれ、朝倉は思わずお茶を吹き出してしまった。

「ちょっと!お前なぁ……」


机を拭きながら朝倉は岩部を睨んだ。


どんな感じと聞かれても正直困る。

特別真波だけを意識するわけにもいかないのだから。


「どんなって言われても普通の子だけど?」
「出来すぎじゃない?」
「出来すぎ?」
「俺、さっきの授業でさ、ちょいと嫌がらせ的な問題ぶつけて見たのさ。」
「は?お前何やってんの?」
「まぁまぁ。でもさ、やってくれたのよ。あっさり問題解いちゃった。」
「そりゃそうさ。」

朝倉は1枚の回答用紙を岩部に見せた。

「100点満点。上林真波ただ1人。」