リビングでは女の人と冬月先輩がなにか言い争いをしていた。
「知らない人」の正体は私の予想通り、私の姉・弓子姉さんだった。

「弓子姉さん、どうしたの? 帰ってくるの早くない?」

「日菜。この子どもたちはどうしたの? まさか誘拐したんじゃないわよね?」

弓子姉さんは私を咎めるようにいう。いや、実際咎めている。

「この子達は友達の弟の新くんとふゆ…雪人君なんだよ!ご両親が入院しちゃって面倒みれないから一時的に預かってるみたいな!? っそんなかんじ?」

私はとっさに嘘をついた。
急に思いついた嘘とはいえ、中々本当っぽい内容になったと思う。

「…あらそう。おかしいわね。このマセガキが言ってることと全然違うんだけど」

弓子姉さんは冷ややかな目で私をみる。

「え!?」

私はつい冬月先輩をみる。
マセガキと言われて不機嫌に拍車がかかり、吠える。子犬のように。

「マセガキじゃなくて俺の名は冬月雪人! こう見えても高校生だ! ちょっといろいろあってこんなガキの姿になったが、高校生だ!」

私はあちゃーと顔を両手で覆った。冬月先輩は本当のことを話していたらしい。
弓子姉さんは常識人だ。いくら本当のことを言っても信じてはくれないだろう。
主張が対立し、二人がケンカをしていると思った宮武先輩は私を呼びにきたのだろう。