その悪夢が始まったのは今から30分ほど前だった。
家でくつろいでいる俺に、謙斗から着信があった。
「もしもし?」
「宏太(コウタ)!今すぐ駅まで来い!」
「は? なんで—…」
「———花がトラックにはねられた—…」
頭の中が真っ白になった。
「今すぐ行く」
一方的に電話を切って、携帯だけを持って出た。マンションの階段を駆け下りて、
全力疾走した。
大雨の日だった…
花の名前を聞いて、我を忘れた。
道路の真ん中で派手にこけた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です...」
膝に痛みを感じた。
でも、花に比べたらこんなの痛くもなんともない。必死に立ち上がって、前を向いた。
「はあ...はあ...ッ」
俺の涙と雨が深く混じり合った。
