切なくて、苦しくて、でも、恋しい。

「…義妹は最近、体が弱って酸素マスク付けてもう何も喋んなくなった。
話しかけても、もう…だめで……
医者が言うには手術しないと助からないって言うんだ…」




「く、じょう……もう、いいからっ
話さなくていいからっ………」




私は泣きながら九条に訴える。



九条のこんな表情は見たくない。



好きな人のこんな顔は見たくないし、
苦しんでる姿も嫌だ。




だから、お願い……



もう話さなくて良いよ………





「…俺が守んなきゃいけねーのに
最後まで…俺が………」





そこまで話すと九条の目から一筋の涙が頬を伝う。



九条…泣いてるの…?




すると私の体はとっさに動いていて、
九条の体を抱きしめていた。




「き、りやま?」




「だから、話さなくて良いって言ったのに…っ九条は背負ってるものが重すぎるんだよ!なんでもっと早く言ってくれなかったの?」




「…言えなかったんだ。
俺とお前がギクシャクしてたから、余計な気を使わせるわけにはいかなかったんだよ…」





「気を使わせてよ!
九条の気持ちが軽くなるならそれでいいよ!だって、私は九条のこと好きなんだから!悩んだっていいよ、苦しくったっていいよ、九条ならいいよ…」




ぎゅうと九条に抱きつくと、
九条は静かに涙を流しながら、
私のことをぎゅーっとした。

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もう太陽は完全に沈んだ。


私はこれからどうするべき?


九条のこと抱きしめて、
好きだって言って、


それから………



九条も私のことを抱きしめた。



悲しいからだってわかってる。
苦しくて、切ないからだってことも。



この抱きしめた行為は、
私に何の想いもない…ただの涙を隠すだけの行為だから………


*****************


「九条、落ち着いた?」



「あぁ、ごめん。めっちゃ迷惑かけたわ。それに、恥ず………」




それは私も同じ気持ち。



九条を泣かせたのは、
私でもあるから…。




そんなことを思っていると、
九条は、私の手を握りしめて。




「霧山。サンキューな。
…俺がこんなこと言っていいのかわかんねーけど、言いたい」




「なに…?」




「霧山、俺のそばにいて……
俺が、義妹を守れるまで、そばにいて…
本当はこんなことしちゃいけねーんだってこと分かってんだけど、もう、無理…
辛ぇんだよ…」




「九条………」




「っ、何言ってんだよな、俺。
ごめん今の忘れて」




なんで、そんなこと言うの……


私は、九条のそばにいたいよ_____




「忘れない、忘れるわけない、忘れられない!!
九条が私を好きじゃないんだとしても、それでいい。さっき言ったでしょ?苦しくてもそばにいるって」




苦しくてもそばにいれるなら、いいよ。





「本当に、いいのか?
それで、いいのかよ…後悔しねぇ?」



「いいよ。」




「迷惑かけるかもよ?」



「いいよ」




「支えきれなくなるかもよ?」



「いいよっ!」



「ははっ、サンキューな」




「うん。辛かったらいつでも言ってよ」



「おう。あんま迷惑かけねーよーに
するわ。だけど、また…さ」




「九条?」




九条の真剣な瞳に見つめられる。



ドキッとする。


ドキッとするけど、きゅんってなった。




心臓が痛い……




すると九条が口を開く。




「抱きしめてもらってもいい?
…俺も、抱きしめる。
お前を、好きになる」




「は、え…あ…」




“抱きしめて”


“俺も抱きしめていい?”


“お前を好きになる”




九条………………っ





「いい…?」




私は固まったままだった。



どうしよう、なんて言えば……



すると私はこんなことを口走っていた。



「私のこと見てくれるっ?
抱きしめてくれる?
辛い時、一番に相談してくれる?」




「あぁ、するよ。
抱きしめてやるし、お前にしかしない」




「九条………
私、九条が好き、大好き」




「うん…」




「受け止めてくれるの…?」




「俺のわがままを聞いてくれるんだから、いくらだって受け止めるっつーの」




「く、じょう…っ」




涙が溢れる。
私の制服にポタポタシミを作る。



これは、何の涙?



九条に対する迷いの涙?



それとも、九条が私のことを思ってくれることに対しての嬉し涙?




…もうそんなのどうでもいいじゃん。





「それなら、私はここにいるよ。
九条の隣でずっと笑ってるよ。
私も九条のこと笑わせてみせるよ」




これが、私の本心。




ねぇ九条。




信じて。