切なくて、苦しくて、でも、恋しい。

夕日が沈みかけて来た頃、
太陽が傾く。



その陽かりは、九条の姿を優しく照らしている。



九条、やっぱり大人っぽくなったよ。


…惚れ直しちゃう。



まー、もう惚れ直してんだけどね!




「なぁ、霧山」



「な、なに!?」




「中学の頃さー、海行って夕日見たじゃん?覚えてる?」




「いつものメンバーで行ったやつ、でしょ?覚えてるよ」




九条は私のことを真剣に見つめながら、
こう言った。




「俺は、…もうすぐ学校を休みがちになる。だから、この夕日を見てなんか、みんなとの事を思い出したっつーか、
なんだろ、ははは」




乾いた笑いを見せる九条。



泣きそうな表情をしていて、
私は何もすることが出来なくなる。




「九条…」




「俺、兄貴もいるけど、妹もいんだよ」




お兄さんは知ってる。ひかるくん。



でも、妹がいたなんて聞いたことないな



「俺さ、親が離婚して…父さんは兄貴を連れてこの街を出てった。俺は母さんに引き取られてこの街で暮らしてる。
今は再婚して義父さんもいる。
その妹ってのが、義父さんの連れ子」




九条のお母さんとお父さん、
離婚してたんだ………




今知ったよ。




九条はこのことを隠してたんだね……




九条の背負ってるものは重すぎるよ。




「九条、もう…いいよ?
あんまり思い出したくないでしょ?」




私もこんなの聞いてられないよ…



私が泣きそうになりながら九条に話すと、九条は「いや、続ける」と言った。




「俺の義妹は生まれつき体が弱くて、
何回も入退院を繰り返しては倒れてる。
今回も倒れてて、初めての長期入院になったんだ。でも、医者が話しててよ、
大きな手術をすれば倒れる心配もなくなって、入退院を繰り返すことはなくなるだろう…って」





義妹さん、体が弱いなんて…….



「ちなみに、中2な。
中2だからまだやりたいこともたくさんあるだろうし、入院ばっかだと楽しくねぇじゃん?だから、手術しようって義父さんが話したんだ。そしたら怖くなったみたいで義父さんの話を聞こうとしてくれなくて…」





そこまで言うと九条は急に黙り込む。




「どうしたの…?」




私が九条の顔を覗き込むと、
九条は歪んだ表情をしていて。




私は何も言えなくなってしまった。