切なくて、苦しくて、でも、恋しい。

「え…?」



私が後ろに振り向くと、なんとそこには
九条が立っていて。



でも、どうして?
偶然でもおかしいよ。


それに、瀬奈って…?



「瀬奈」



もう一度私を見ながら話す九条。



「え、九条…」



「すいません、瀬奈を返してください」



「え?あ、九条…なに?お前、霧山の彼氏なの?」



「ちょ、ちょっと…」



九条、どうするの、名前なんかで呼ぶからそうなるんだよ!



ってか、付き合ってないし………



すると九条は私達をまっすぐ見ながら
真剣な顔でこう告げた。



「そうだけど?」



「はっ?ガチ目に言ってんの?」



「そうだって言ってんだろ」



「ちょっと待ってよ九条!
九条となんか付き合って……」



「瀬奈!!!こっち来いよ!」



さっきよりも大きな声を出した九条。



なんでそんな切なそうな顔してるの…



九条………



「ごめんなさい、行かなくちゃ」



「あっ、おい!霧山…」


後ろで男子の声が聞こえたけど、
今は九条のところへ……



「九条っ?」



「…霧山、ごめんな。
勝手なことすんなよって感じだよな」



私が九条のところへ走っていくと、
九条は切なそうな顔のまま俯く。



九条、どうしてそんな顔するの………



「いいって、気にしてないから。
それより、助けてくれてありがと」



「ありがとな。
まぁ霧山にはいくつか借りあるしな」



「えっ?借り?いつそんなの作ったっけ?」



まったく記憶にない事。


「ん?いや、こっちの話。」



そういって、また切なそうに微笑んだ。



最近思うことがある。



九条が私に笑いかける時、
必ず切なそうに微笑むんだ。


理由はもちろん私には分からないけど。
きっと何かあるんだろう。



「んじゃあ、戻るか」



「え?あぁ、そうだね」



九条は私の前を歩いていく。



その背中は少しづつ小さくなって行って、もう手を伸ばしても届かない距離。



…本当にこのままでいいの?



友達のままでもいいからいたいって
願ったのは……誰?



だったら、このギクシャクした関係のままではいられないじゃん!



勇気を出して。


がんばれ、私。




すると、私は大きな声で九条を呼んでいた。



「九条っ!!」



すると、九条はびっくりしたように
私の方へ振り返る。



「霧山?」



私は深呼吸してから、
今伝えたいことを伝えていく。




「あのね、九条。
私が告白してからギクシャクして、話したくても話せなくなって、それは私のせいだよねごめんなさい。
でも、九条とこのままではいたくないの。中学生の頃みたいに笑ってたいの
九条の、となりで」



これが私の思ってること。



全部伝えたつもりだよ、私はね。



「…霧山、俺もごめん。
俺も思ってた、避けるのは良くないけど、なんとなく気まずくて気づかないうちに霧山を避けてた」



「…九条…」



「だけど、そんなの良くねぇよな
ごめん。こんな俺だけど、そばにいてやって」



「…友達として?」



って、何聞いてんだ私…



「友達、として」



「…うん、ありがとね」



「おう、」



ほら、またそうやって、
切なそうに微笑むんだ。



でも、九条。



私はあの日から一歩進めて。



秒針が動き出したよ。