帰り道、鳴海も私もなにも話さずに
電車に揺られていた。



どこかでパーっと遊ぶ?ってなったけど、そんな気分でもなかった私は、


ごめん、今日はいいや。



そう言って断ってしまった。



せっかく鳴海が気を利かせて遊びに誘ってくれたのに………



鳴海の家に着くと、鳴海は一言、


「瀬奈、元気だしなよ」


そう言って励ましてくれた。



*******

朝、目を覚ますと雨が降っていて、
憂鬱な気分になる。


「はやく準備しないと…」



あまり乗り気ではないけど、
早く準備しないと鳴海も私も遅刻してしまう。



クローゼットから制服を出し、
私はそれに着替えると、リュックに荷物を詰め込んで行く。



そして急いで下の階に降りて、
お母さんが用意してくれてるご飯に手を付ける。



「瀬奈、おはよう」



「お母さん…おはよう」



「瀬奈?どうしたの?元気ないじゃない。なんかあったの?」



お母さんが不思議そうな顔で問いかけて来る。



でも、まさか



九条が好きで悩んでる。


なんて言えるわけもないし、
九条の話したら、

あれからどうなったの?



みたいなこと言われそうだから、
言うのはやめよう。



「ううん、何もないよ。
それより早く行かないとだから、もう行くね!!ごちそうさま!」



あまりご飯も食べずに私はリビングを飛び出す。



「じゃあ、行ってきます」



「行ってらっしゃい」



私はドアを開けて家を出た。



*********

教室に着くと、ザワザワしていて、
元気だなって思ってしまう。



私が席に着くと、机の中に教科書を詰め込んでいく。


…必然的に九条の席が視界に入る。



すると前の席の鳴海に話しかけられる。



「あのさ」


「どうした?」


「いやー、あの、その…」


何か言おうとしてるみたいだけど、
何かをためらっているような……



「鳴海?どうしたの?」


「…ごめん!」



「は?」



急に鳴海に謝られた私。


ってか、何かされたっけ?
覚えてないけど………



「ちょ、鳴海、意味が分からないんだけど。鳴海、私になにもしてなくない?」



「うん?そうかな。私さ、思ったんだけど、その、九条の隣じゃん?」



…あ、そういうこと。

私が九条好きだから、
九条の隣でごめんって意味だと思う。



「…そんなこと、気にしないのに。
鳴海、気にしすぎ。それに……
私と九条はそんな関係じゃないしね…」



「え?そんな関係じゃないって、
どういう意味?」



あ、しまった。


ついボロが出てしまった。
まだ言うつもりなかったのに…



「はは、なんでもない。
だから鳴海は気にしなくていいよ」



うまく隠せたかは知らないけど、
ひとまずこれで信じて欲しい……



「…そっか」



ちょっと怪しんでる様子だけど、
なんとか信じてくれたかもしれない。



すると、ガラッと教室のドアが開く。


…九条が、この教室に来た。



私の隣を通り過ぎてから、鳴海の席の隣に腰を下ろす。



「あ、九条、おはよ」



「はよ」



2人は平気な顔して話してるけど、
私はずっと俯いたまま。



…神様、どうしてこんな意地悪なことするんですか。



九条と笑っていたあの綺麗な日々はもう……




戻って来ないのかな………