切なくて、苦しくて、でも、恋しい。

「私、九条のことが好きだよ」


「…え?」


静かな教室に響く二人の声。


九条。そう呼ばれた男子は驚きを隠せないとでもいったような表情で固まる。


好きだよって想いを伝えた女子は、
今にも泣き出しそうで切ない表情をしている。



「き、霧山、だってお前、そんな態度1度も出したことねぇのに…」


「うん。だってバレちゃったら振られると思ったから。どうせ振られるんだったら面と向かっての方がいいかなって」


霧山、そう呼ばれた女子はなんとなく作り笑いのように思える。



「俺は……」


下を向きながら答えを必死に探すが、
何も出て来ず、苦しい時間が流れる。


外は部活に励む生徒たちの声や、
廊下をたまに通る生徒会の人達。


でも2人にはそんなの気にすることもなく、まるで時が止まったかのように動かなくなってしまう。


どんなに止まれって願っても、
過去をやり直したいと思っても、
進んでしまっている“時間”は、
誰にも止めることはできない。


1秒ごとに進んでいく時間。

私たちの教室は以前、刻が止まったまま。