きみが教えてくれた夏

「へぇ、なら夏休みの間だけここに来てんだなぁ」


「うん、まあね」





涼しい。
彼が教えてくれた木陰はとにかく涼しい。
涼しすぎて話になかなか集中出来なかった。


体中に生気が戻っていくみたい。
枯れた花が生き返るかのように。



「ほれ、これでも食え」



突然、目の前にきゅうりが出てきた。



「ん?」



「うちで作った野菜だ。うめぇぞ」



にこにこ。


私はきゅうりを手に取る。


冷たい。
川から出してすぐみたいに。
いつ出したんだろう。



「いただきます」



しゃきっ。


しゃくしゃく。



新鮮な音。
味はとても美味しい。
水々しくて、本当にきゅうり?って錯覚してしまう。



「美味しい…!」



私は夢中で齧り付く。


しゃくしゃく。


むしゃむしゃ。




「そうか、そうか。にしても美味そうに食べるなぁ」



うっ…今のは女の子らしくなかった?



「いい顔するなぁ」



彼は全く気にする素振りもなく自分もきゅうりを齧る。



うめぇ。


うめぇ。


夏はこれに限るなぁ。


なんて笑いながら食べるものだから少し見惚れてしまった。