きみが教えてくれた夏

「え?」



私の上に重なる手は私の手より大きくて日に焼けていた。



顔をあげてみると。



これまた肌も日焼けしていて、頭には少し大きな麦わら帽子を被り、薄手のTシャツに短パン姿の少年が立っていた。



「あ、あの。これうちのスイカですけど…?」



私が控えめに言うと少年は手をぱっと放した。



「わ、悪りぃ!別に俺はぬすっとじゃねえぞ!ただ、陽が出てきたから日陰に移動させようとしただけだ!」



あたふた。


手を使ってジェスチャーまでして。


彼があたふたする度に大きめの麦わら帽子が揺れて目にかかる。



「ぷふっ、慌てすぎ。大丈夫、泥棒なんて思ってないよ」



私が笑うと彼も少し落ち着きを取り戻したみたいで。



「そうかぁ、ならよかった。にしても、随分洒落た格好だな。どっから来たんだ?」



私の格好が洒落てる?



確かに学校でもオシャレだとは言われたことはあるが…。



今、私が着ている服は流行の花柄チェックのワンピースだ。
今どきなら男の子でも知ってるはずだ。



「東京だけど?」



私がそう言うと彼はまた大袈裟にビックリと声を上げる。


そして私に握手まで求める始末だ。



「都会人、初めて見たわぁ。随分と遠出したもんだなぁ」



彼は宇宙人にでも遭遇したかのように私の周りをぐるぐると回る。


年は同じくらいに見えるが行動面からは小学生くらいに見えてしまう。



「立ち話もなんだ。あの木陰で話でもせんか?」



彼は麦わら帽子を上げながら、にこりと笑った。



その笑顔はまるで太陽みたいで。



綺麗だなって思った。



私はその太陽みたいな笑顔に吸い寄せられるようにコクンと頷いた。