きみが教えてくれた夏

ぱくぱく。



少しずつおにぎりが無くなっていく。
食べるスピードは呑気な口調と比べて随分と早い。



「うめえなぁ、これ。未来のばあちゃんが作ったんか?」



二個目のおにぎりを口に運びながら海音が訊ねてくる。


海音は本当に表情が豊かで。
感情が乏しい私とは大違いだ。


よく笑って。
ちゃんとありがとうも言えて。


私とはまるで反対だ。
それが羨ましい。



「うん、そうだよ」



私がそう言うとまた笑って「そうか。そうか」って言いながらおにぎりを食べる。



ぱくぱく。


むしゃむしゃ。



「未来のばあちゃんは料理がうまいんだなぁ。俺んとことは大違いだなぁ」



そう言えば。
私は海音の家のことは知らない。
何人家族だとか。
兄弟はいるのかとか。



「海音のおばあちゃんの料理は美味しくないの?」



思い切って聞いてみる。
そしたら海音は首を横に振った。



「もうばあちゃんはいねえ。今はじいちゃんと二人暮らしだ」



あっ…。
ちょっとまずいこと聞いちゃったかな。


触れてほしくない話題だったらどうしよう。
興味があって聞いたことはやはり間違っていたかも知れない。



「ごめん、なんかまずかったかな…?」



控えめに海音の顔を覗くとゆるりと海音は笑った。



「大丈夫だぁ、ばあちゃんは病気でなぁ。だけど、ばあちゃんは最後の最後まで生きてくれんだ。だから後悔はない、幸せな最期だったと思う」



にこり。
綺麗な笑顔だった。


生死について語る海音の表情は大人びていてちゃんと死を受け入れていた。


私とは大違い。
私はいつになってもそんな風に誰かに話すなんて出来ないと思う。