あの頃の私達はまだ幼すぎた

「菜美。携帯光ってる」

「げっ」

“着信16件”

「紫苑今日の予定なしで」

「お母さん?」

「そ。長くなるかもだから帰ってて?」

「わかった」

変な緑色のリュックを背負い教室から出てく紫苑。

私も移動しないと。

重くなる足を無理矢理動かして行き着く場所はいつもの屋上扉の前。

プルル…プルル…。

「菜美!!あんた今どこにいるの!?」

「学校。集会あって終わるの遅かったんだ」

「お母さんが大変な時にあんたはそうやって……!」

何故かわからないけど機嫌の悪い母。

本当時々頭おかしいんじゃないかと思う。

「ちょっと!!聞いてるの!?」

「聞いてるよ」

こうやってどこにいても私は囲われてる。

見えない柵に。

悲しくなるけど仕方ない。

飛んでいく羽根なんかとうの昔に折られたんだから。

母のよくわからない暴言を浴びせられどんどん溜まっていく涙。

電話が終わる頃にはもう限界で。

それでも。

“夜仕事だから早く帰ってきて支度しなさい!!”

そう。仕事があるのだ。

今日は確かキャバクラのボーイだったはず。

泣いてる暇なんかない。