あの頃の私達はまだ幼すぎた

「菜美?ママのお願い聞いてくれる?」

こう言ってきたときは私にお金を借りにいかせる合図。

台本まで用意してあるのは今思い出しても笑えてくる。

一句一句間違えないようにして覚え必要ならば涙まで流してみせた。

そうしてお金を渡せば母は機嫌が良いし優しくしてくれたから。

でもそれがきっかけで私は友達から仲間外れにあうことも多かった。

それでも良かった。母が私を愛してくれれば良かった。

いつからだろう。母の愛が私ではなくお金を持ってくる私に向けられるようになったのは。

いつからだろう。“あたし”が、“私”に変わったのは。