「…悪い起こすの気が引けたから…」

ゆっくりと階段を上がってくる優。

屋上扉の鍵はかかってるから開かないし後ろは壁。

まさか飛び降りるわけにもいかなくて。

唇を噛み俯く。

そっと目の前に影ができ視界に見慣れた上履きが見える。

「奄上…」

そんな優しい声で呼ばないで。

私にはそんな権利ない。

優しくされていいわけがない。

だって。

あの人は優のお母さんに。

優に。

「奄上…俺には話せない?」

あんな…ヒドいこと。

思い出してまた涙がでる。

許されるわけない。そしてあんな人が自分の親なんて恥ずかしい。

「奄上。話したくないなら無理には聞かない」

「でも。泣いてるならほっとけない」

そう言って握りしめていた腕をそっと外してくれた。

自分でも気づかないほど無意識に握りしめていたからか、少し赤くなっている。

「泣いていいから。唇噛むな」

首を横にふる。