あの頃の私達はまだ幼すぎた

「帰ろう…?菜美」

「いや」

「お母さん謝るから…もうあんな事しない」

「やだ」

「お願いよ菜美…お母さんにはあんたしかいないの…」

泣き崩れる母親。

「…っ。どんだけ謝られても戻らない…」

ゆっくりと離れ手押し信号機を押す。

この信号さえ青になれば…。

「菜美!!あたしがこんなに謝ってるのにあんたはそうやって見捨てるのね!?」

ビクッ。

「あんたも…あたしを捨てるのね…あの人のように…!!」

本能か何かわからないけど。

やけに頭の中で嫌な音が響いた。

痛い、痛い。

頭が割れそうなくらい。

「行かせない…絶対に行かせない」

近づいてくる目の前の女は。

本当にお母さん?

信号が青に変わったのを点滅音でわかった時。

「どうしても行くなら…あんたを殺してあたしも死ぬ」

私は本能的に後ずさった。

だが。

ペチャ。

力が抜けてしまいそのまま手押し信号に寄りかかってしまった。

包丁を向けられたのはこれで三度目だった、