「大体学校に化粧してくるなよ…」

「仕方ない」

「だから先生方に睨まれるんだぞ」

「上手く切り返してるしょ」

消毒液が染み込んだ綿で傷口をポンポンとしてく山ちゃん。

「いつもごめんね山ちゃん」

「本当。お前今年入ってから結構やばいぞ」

「んー…反抗期かな?」

「反抗期で死んだら笑い話にもならんから」

コンコン。

「山ー?ごめんね生徒怪我したから手当てしてあげてー」

「今無理だからお前やれやー」

ベッドがある部屋と山ちゃんの机などがある部屋の間に引いてあるカーテンから顔だけ覗かせる信吾さんと目が合い手を振る。

すると目を見開きその後すぐに悲しげな顔をする信吾さん。

そんな顔しないでよ。

「ごめんねー山、女の子とイチャイチャしてるから手離せないんだって~」

「デタラメ言うなそこー」

「そこ座ってよ」

カタッと椅子をひく音がする。

「最近どうなの?彼女とは」

「実は…クリスマスに向こうの家にお邪魔するんですよ」

ピクッと身体が固まるのがわかる。

それと同時に山ちゃんの手が止まる。

「そっか。もうすぐ1年?」

「そうっすね…指輪買ってやろうと思ってて」

「へえー…男前だね」

聞き間違えるわけない。

彼の声。

「菜美…」

耳を塞いでくれる山ちゃん。

ポロポロとおかしいくらい涙がでてくる。

わかってたよ。

友達以上でも恋人未満。

そんな対象じゃないことも。

それでも。

胸を押さえる。

心臓が痛い。

心が痛い。