正直なところ、私はそんなに困ってはいない。
むしろ、めっちゃ面白がっている。
こんな美形で黒ずくめな人が、蜂に追われてて、空飛んでた、なんてどんな状況だよ。
ツッコミ所満載だよ!
ちょー興味わくよ!
「どうやって飛ぶんですか?」
私はかなりワクワクして聞いた。
カラスさんは、一瞬考えるように目を伏せて、左腕を前に出した。
そして左腕はーーーー大きな翼に変わった。
「・・・・・・」
何が起こったのか理解できなかった。
左肩のジャケットから、布が艶めいた黒い羽に変わっていって、上腕、前腕、そして手も黒く染まり、羽が伸びて。
私はポカンと翼を見つめた。
カラスさんはユラユラと翼を動かして、
「これで、飛んだ」
と、僅かに口角を上げた。
なんとなく、ドヤ顔に見えた。
「・・・触っても、いいですか?」
「あぁ」
私はそっと翼に手を伸ばした。
羽は柔らかくて、ツヤツヤしていた。
とっても手触りが良い。
上から下へと、何度も何度も撫ぜる。
私は今、とっても嬉しい顔をしてると思う。
「ちょー素敵です・・・」
うっとりとした声で、私は言った。
ふとカラスさんを見ると、ちょっぴり眉が下がって、困ったような、不可解なような表情をしていた。
「・・・気に入ったのか?」
「はい!カラスさんの翼、めっちゃ綺麗です!」
私は躊躇なく、満面の笑顔で言った。
カラスさんが僅かに目を見張る。
その間も、私の手は翼を撫でるのをやめない。
また、翼を眺めつつ撫でていたら、すぅーっと腕に戻ってしまった。
「あぁー・・・」
とっても残念。
しゅん、とカラスさんを向けば、右手で口を覆って俯いてた。
耳がほんのり赤くなってる。
・・・あー、触りすぎた、かなぁ。
考えてみれば、会ったばかりの男の人の腕を撫でまくるって、どうよ。
変態?
痴女?
いやっ、でも、カラスさんの翼が素敵すぎるのが悪いんじゃん!?
とか、内心で言い訳をしてみるものの、なんとなく微妙な雰囲気になる。

