「・・・えっと、カラスさん」
「なんだ」
「えっと、誰に追われてるんですか?」
「・・・ハチだ」
「はち」
はち。
八。
蜂。
鉢?
「はち?」
「あぁ」
イントネーションからすると、蜂、なんだけど・・・。
「はちって・・・虫の蜂?」
カラスさんは頷く。
えー・・・。
なに言ってるんだろ、この人・・・。
私はなんだか遠い目をしてしまう。
黒ずくめで、美形で(←やっぱりそれ関係ない)、追われてるのが蜂?
何?
蜂に嫌われてんの?
あ、いや、逆だ。
蜂にめっちゃモテてるんじゃ。
あ、てか、黒ずくめだから?
蜂は黒いものに積極的に攻撃するっ、て聞いたことあるような。
養蜂場でも行ったのかな。
「・・・・・・」
私は何と言っていいのか分からず、黙る。
カラスさんは、黙り込んだ私を静かに見つめている。
・・・あぁ、そういえば。
「あの、どうやってベランダに登ったんですか?」
重要なことを忘れてた。
「後、なんで私の部屋に?」
カラスさんはゆっくり瞬きすると、答えた。
「・・・ここへは、飛んできた」
「とんで・・・?」
「あぁ。飛んでたら偶然鍵が空いてるこの部屋を見つけた。人の気配がしなかったから降りてみたら、お前がいた」
カラスさんは少し眉根を寄せた。
「とんでって、空ですか?」
「あぁ」
「・・・・・・」
もう、何て言えばいいのか分からん。
どうしよう。
こういう人、厨二病っていうんだっけ?
いや、でもカラスさん大人だし、美形(←絶対関係ない)だし・・・。

