その人は私に向き直ると、目だけで部屋を見回したようだった。
そして、すっと動くと、ベッドの前まで行き、ベッドを背もたれにして座り込んだ。
「少し休みたい。ここを借りる」
言って、目を閉じた。
その静かな表情も綺麗で、私の胸がキュッと締め付けられた。
なんだか切ない気持ちになりつつも、私が思うことは。
・・・いやいやいや!
『少し休みたい』じゃないよ!
何勝手に借りてんの?
ここ私の部屋なんだけど。
私、「いいよ」なんて一言も言ってないんだけど!
てか、まずアンタ誰よ。
そこ説明しなさいよ。
そして、追われてるって何?
ちょー恐いんですけど!!!
私は少し、どうしたものか、と考えたものの、その人のそばへ近寄った。
膝をついてしゃがみ、その人を見つめると、すっと切れ長の目が開いた。
「・・・なんだ」
いや、『なんだ』じゃないよ!
と、思いつつ、その低い声にふるりと体が震える。
声もひじょーにイイ声です!
大好きです!
とか叫びたくなる。
「いやー・・・あのー、誰、ですか?」
「・・・・・・」
その人は黙ったまま、僅かに首を傾げた。
え。
黙秘ですか?
そうなんですか?
は!
『俺の正体は言えない。』
『言ったら、お前も消されちまうぜ・・・。』
的な!?
そうなの!?
その人じっと見るも、答える様子なし。
えー・・・。
私は次の言葉に迷う。
その人は私が何も言わないからか、また目を閉じてしまう。
「あのー・・・お名前は?」
「・・・・・・」
今度は目を開けもしない。
私は小さくため息を吐いた。
すると、少し遅れて、
「・・・カラス」
低い声が言う。
「からす?」
つい復唱すると、しっかりと私を見て、「カラス」ともう一度言う。
私はまじまじとその人の全身を見た。
黒ずくめだから・・・鴉?
なんとなく納得する。
てか、本名じゃないよね。
なんだろう?
組織のコードネームみたいな奴 ?

