思わずもたれかかった壁は、温かかった。
「落ち着け。」
拓人か。
拓人は私の体を自分の方な向かせ、頭を撫で始めた。
…なにやってんの、こいつ。
「…ねぇ、きもい。」
「ああ。」
軽く睨んだのに、まだ手は私の頭の上。
私はそんなことされても決して甘えないから。
きゅんとすることもないよ。
「離せ。」
後ろに片腕がまわってるから身動きがとれない。
まだお母さんに言いたいことがある。
「……」
「離してよ!」
体をバタバタ動かしても、がっちりホールドされていてびくともしない。
「…そんなにお金が大事なら、私達なんか産まなきゃ良かったのに。」
逃れるのを諦めてその状態で話した。
腰にまわっている腕の力が強くなる。
それでも頭に手を置いて撫でている。
「…離して……。」
こんなひどいことを言ってるのになんで撫でてんの。
おかしい。
そのとき、頬に透明な液体がつたった。
なに、拓人。よだれたらしてんの?
唇についたそれはしょっぱかった。
それは紛れまない、私の目から出た物で。
なんで泣いてんの?
私きも…。
「は、はは…」
乾いた笑いが出た。
泣くことなんて、あんまりないのに。
なにやってんの、私…


