「うん、またまた全部バツ……。成績上がらないね、宗助塾にだって行ってるのに。」
「一応気にしてるんだよ?俺も。なあ、何か魔法の薬でどうにかなんない?」

メルヘンな考えに私は愕然として聞き返した。

「だから、魔法の薬。」

成績が上がらないのはこのどうかしてる頭のせいなのかなぁ……。
独特の宗助ワールド。まあ、アタシは嫌いじゃないけどね。

「無いよ!」
「わ、酷。そんなに早く否定しなくたっていいだろ~?」
「だって、留年だよ?高校になったら留年!そんなの、ヤダ……。」

少しぶりっ子をする。キラキラ目で。
本当のことだった。
中高一貫校のここは、高校に上がったら留年システムが始まる。
二回留年で退学。そんな人少ないけど、右肩下がりのこの人の成績なら……。
って、嫌でも考えちゃう。

「……でも、そんなこと言われたってなあ。俺馬鹿だし。」

宗助のノートをめくるとびっしりと書かれた先生の説明。
感心するけど、成績は学年で中の下の宗助は悲しいまでに成績が伸び悩んでる。
早く手を打たないと退学の危険があることを聞いて、親に塾に入られた。
そう言ってた気がする。
じゃあ、遊べないのかぁ……。
そんな時、アタシに一つの考えが生まれた。そうだ―――――!!

「……ねえ、勉強会しない?!ゴールデンウィークに。」
「え?あ、まあ俺は平気だけど……。」
「じゃあさ、友達何人か誘ってきて?こっちも誘うから!!」
「あ、高橋達でもいい?」
「いい、いい!!」

二人っきりで勉強する勇気は無いけど、雰囲気的にチャンスがあるかも!
そう思ってアタシは一人張り切っていた。

君の影を踏まぬように歩く。
君が傷付いてしまわぬように。
春に出来た氷上にそっと手を触れ。
凛とした君を見るなんて、望んではいなかったのに……。
ねえ、そんな遠くに行かないで。
君の光はアタシの隣にあるはずだった。
そう、ずっと温かいままで。アタシの隣に。

さようなら、そして、有り難う。