暗殺者、殺し屋などと。

一般人ならばフィクションの中でしか耳にしない職業だ。

「そんな人達、本当にいるんだ…」

「君が知らないだけだ。裏社会には殺しを生業にする連中も存在する」

倉本はそう言って渋い顔をした。

一般人にこういった話をするのは、あまり誉められたものではない。

だが警察の捜査情報の漏洩にならない程度に、倉本は美奈にはこういった話をする。

情報の提供という事ではなく、あくまで倉本の『愚痴を聞かせる』といった意味で。

真面目で実直、息抜きの方法を知らない倉本のストレス発散の一助になれば。

そう考えた美奈が、話すようにと倉本に半ば強引に提案したのだ。

「で、その殺し屋さんにやられたと」

巽の顔の傷に治療を施していく美奈。

「やられてねぇ。引き分けはしたけどな…痛っ!」

消毒が沁みたのか、巽は顔を顰めた。