「ちょっと、どうしたのその顔っ?」

新宿歌舞伎町の雑居ビルの裏手にある非常階段をのぼり、2階に位置する診療所。

そこの若き女医である田中 美奈(たなか みな)は、倉本に連れられてやって来た巽の傷だらけの顔を見て驚く。

「貴方がそこまで怪我するなんて珍しいじゃない、喧嘩強いんでしょ?」

「人をチンピラみたいに言うな、俺は刑事だぜ」

不服そうに椅子に座る巽。

大した怪我ではないと言い張ったのだが、ほぼ無理矢理に、倉本が懇意にしている美奈の診療所に連れて来られたのだ。

「ふふ、ヤンチャな男の子みたいね」

からかうように告げる美奈。

「チッ…だから来るの嫌だったんだよ」

巽は不貞腐れたようにそっぽを向いた。