夜が明ける前に、亮二は教会を出る準備を始めた。

場所が特定された。

もうここにはいられない。

「雪村さん」

亮二の背中に、牧師が声をかける。

「お前もここを離れた方がいい」

振り向く事なく、亮二は牧師に告げた。

「奴は伊庭 瑛士だ。裏の世界でも名うての暗殺者…古来より続く隠密の家系、暗殺の英才教育を受けてきた男だ。そんな男が顔を特定され、殺しをしくじった。このまま黙ってはいない。必ずもう一度来るぞ」