暗殺者には忍耐力も必要だ。

標的が姿を見せるまで、隙を見せるまで、何時間でも何日でも辛抱強く待ち続ける精神力も求められる。

仕事を完遂するのに、焦りは禁物。

身を潜め、待ち続ける。

そしてようやく日没が訪れる頃、亮二は行動を開始した。

無音歩行で移動する。

既に薄闇。

夜間、ビーチでスキューバをするような客はいない。

余程の経験がなければ、夜のダイビングは危険だからだ。

インストラクターとて事故を恐れ、客に夜間のダイビングは勧めない。

亮二が『仕事』をこなすのに、目撃者を極限まで減らす事が出来た。