予備動作などなかった。

景子は突然踏み込んできて、稲妻の如き横薙ぎ!

「っ…!」

伊庭の隠密装束、その胸元が大きく切り裂かれる。

下に鎖帷子を着込んでいたのだが、それさえも切り裂かれ、皮一枚斬られていた。

鎖帷子など、気休めにもならない。

景子の刀は、鉄さえも断つ。

「あら、今のは入ったと思ったのに。反射神経いいのね」

何で外れたのかしらとばかりに、小首を傾げる景子。

そのおどけた仕草が、かえって恐怖を誘う。

「ならもう一回」

言った直後には、景子は伊庭の間合いに踏み込んでいた!

「今度はさっきよりも深く踏み込んで、と」