愛刀の刀身を眺めながら、狭霧 景子は呟く。

「物心ついた頃から、刀は握らされていたわ。居合、二刀流、白刃取り、刀を失った際の組み打ち術まで…剣術に関連する事だったら、何でもパパに叩き込まれた。女の子らしい事なんて何一つやらせてもらえなかったわ。無名の我流剣術の癖して、流派の存続ばかり考えてたパパだった」

そう言って、景子は眉を顰めた。

「いつか私がこの手で首を刎ねてやるつもりだった」

「……」

景子の狂気じみた発言を、伊庭は無言のまま聞いている。

「なのにどう?私が殺してやろうと思ったら、パパは雪村 亮二にあっさりと殺られちゃってたわ。私のこの行き場のない怒りをどうすればいいの?って感じでしょ?だから」

景子は刀を構えた。

「貴方、腹癒せに死んでくれる?」