とある倉庫。

普段は誰もいない、荷物だけを預けてある無人の場所だ。

この場所で、亮二達は捕らえた天損星への拷問を行っていた。

拷問といっても、相手は女だ。

手段は決まっている。

「いやいや、すげぇな伊庭、この薬は」

松岡は小瓶を片手に満足げに笑みを浮かべる。

…それは、いわゆる媚薬だった。

主に性的興奮を高める作用を持つ薬の総称。

伊庭の持つそれは、隠密の薬学知識を利用して作られた強力なものであり、現代風に言い換えるなら、アッパー系と呼ばれる興奮作用のある麻薬とほぼ同じものだ。

性欲昂進に効果があるものの、依存性が高く、精神崩壊さえ起こしかねない。

拷問に対する訓練を施された暗殺者でさえ、容易く陥落させてしまうような危険な薬物だった。

敵ならば、どんな手段を用いようと罪悪感すら持たない。

伊庭の非情さが窺えた。