それでも抜群の体捌きで、亮二の鋼線を回避し続ける天敗星。

反撃までには至らないものの、鋼線を掠めさせもしない。

「大した体術だ」

「お誉めに預かって光栄ね」

息切れ一つ見せずに鋼線を回避し切った天敗星は、攻めあぐねた亮二の鋼線の間を掻い潜って接近しようとして。

「がっ!」

背中から刀を貫通された。

背後に立っていたのは、気殺によって気配を完全に絶った伊庭。

荷台という狭い空間にいながら、気配を殺す事で『消えていた』。

視界に入っていながら気付かせないほどに。

そして一撃のもとに葬り去った。

女であろうと容赦なく。

まだ微かに息がある天敗星。

伊庭は刀を引き抜くと同時に、彼女を高速で走るトラックの荷台から蹴り落とした。