「たまんねぇな、都内まで戻ってきて正解だったなぁオイ!」

バンバンと伊庭の背中を叩く松岡。

もう意気投合したのだろうか。

「……」

無言のままだが、伊庭としては逃走中の身だ。

もう少し大人しくしておいて欲しいのだが…。

「…松岡さん、変だ」

亮二が二台のバイクを見ながら言った。

「見てくれ、あのライダーの腰」

「あぁん?腰のくびれがたまんねぇって?」

「…あのベルトに下げているのは、トンファーじゃないか?」

「あん?」

亮二の言葉で、松岡は目を凝らす。

およそ45センチの長さの棒の片方の端近くに、握りになるよう垂直に短い棒が付けられている。

沖縄の古武道において使用される武器の一つ、トンファー。

基本的に二つ一組で、左右の手にそれぞれ持って扱う。

そのライダーはトンファーを手にして。

「!?」

幌から顔を出していた松岡を殴打しようとする!