と。

「……」

焦点の合っていなかった娘の瞳に、光が戻った。

「雪村…亮ちゃん…?」

「なに…」

亮二が娘の顔を見る。

「亮ちゃんでしょ?…村の外れにお母さんと一緒に住んでた…昔よく一緒に遊んだよねぇ…」

「……雪村 夢追子(ゆきむら むつこ)か……?」

「おいおい知り合いかよ、この中古品」

松岡が言った。

…亮二ら雪村一族は、遺伝的に非常に希少な存在なのだそうだ。

その遺伝子を利用すれば、次世代に優秀な子孫を残す事が出来る。

それ故に彼らの村はバッドカンパニーに襲撃された。

男は無理矢理に子種だけ排出させられて用済みとばかりに殺され、女は犯され、孕まされた上に連れ去られた。

当時幼子だった夢追子も、そういった理由で攫われた雪村の一族の一人。

亮二とは遠縁にあたる。

もうとっくに殺されたものだと思っていたが…。